中学受験家庭教師の国語メインブログ

23区西部在住の家庭教師が日々思うことを書いていきます。

都立高校入試制度について

以下、都立高校一般入試の制度と、

内申点という仕組みについて雑感を書いてみたいと思います。

 

内申点の問題点なども、

よく言われていることではありますので

目新しいことはそうないかもしれませんが。

 

まず、都立高校の一般入試では、

内申点300点、テスト700点の合計1000点で選抜が行われる。

 

テストは英・数・国・理・社の5科目。

基本的に傾斜配点はなく、

100点ずつの500点満点なので、

テスト点の配分である700点にするため、

素点の合計を1.4倍する処理が行われる。

 

また内申点は、主要5教科の成績はそのまま、

4つの副教科については成績を2倍して合計するという方式である。

 

よって、オール5であれば

5×5+5×2(副教科は2倍)×4=65 

 

となり、これが内申点の最大(300点)である。

 

オール3という人の内申は

3×5+3×2×4=39

 

300×39/65=180となり、180点が内申点となる仕組み。

 

ご覧のように、

オール5とオール3では内申点で120点の差がつくため、

テストの素点で逆転するには

120÷1.4=85点強の差をつけなければならなくなる。

(500点満点で、85点差をつけるということ) 

 

通常、同レベル帯の受験生相手に、

ここまでの差をつけることはほぼ不可能に近いといえる。

 

これが、都立高校の受験生が内申点を重視する理由である。

 

しかしこの内申点

テストの成績だけでつけているわけではないのは

周知の事実となっており、

そこに不公平と考えられる要素がいろいろと混ざってくることになる。

 

まず、提出物をしっかり出したかどうか。

これは当然のように思えるかもしれないが、本当は疑問も残る。

 

以下は藤井聡太プロのエピソードから

 

mainichi.jp

 

最近は対局が増え、学校を休む日が増えた。裕子さんは「聡太の持論は『宿題はおかしい』なんです」と明かす。「授業を聞かず、答えを写して宿題を提出する人が認められている。授業をちゃんと聞いているから宿題をやらないのと、どっちがいいんや」。そんな愚痴が、また可愛かったりする。

 

別のメディア報道によると、

彼は「授業内容は理解できているのになぜ宿題をやらなければならないのか」

と教師と30分議論し、結局、教師に従って宿題はやることにしたらしいが、

これは優秀な生徒ならば誰もが持つ疑問ではないだろうか。

 

彼はおそらく学業についても優秀な能力を持っていることが考えられ、

その彼が、国立付属でおそらく進度の早くない

名古屋大付属中のカリキュラムに疑問をもったことは想像に難くない。

 

(その後スケジュール過多を理由として、同高校卒業目前にして中退している。

 この話とは無関係とは思われるが。)

 

 

 

そうはいっても、提出物を出したかどうかを判断材料にするというのは

一応客観的な基準であるため、まだ納得できる。

 

ところが、現実には「授業態度」という名目で、

授業中に質問したかどうか、

意欲ある態度で授業を受けていたかどうか、

 

といった不明確な基準が

内申点の評価に用いられているのが現状である。

 

そもそも、質問というのはわからないからするものであって、

高いレベルの生徒からすれば、

授業が完全にわかっていれば質問する必要は特にないはず。

 

また、わかりきった授業を聞いている際、

意欲ある態度を取ることは、

演技をしなければそう簡単なことではない。

 

それでは、こうした生徒達は

内申点を上げることはできないということになってしまうが、

この点は完全に無視されている。

 

また、逆に、低レベル層にとっては、

授業はわからないことだらけである。

 

しかし、レベルの低い質問を頻発されては、

授業がたびたび中断してしまうことも考えられる。

 

以上から、

教員が授業を円滑にすすめることができるよう、

貢献してくれるような質問が評価されやすいとも言われている。

 

例えば、教員が

「このクラスのレベルだと、この単元について

理解が不十分な人も出てくるだろうな。

本当は触れたいんだけど、

時間の都合や、授業の流れ的にちょっと難しいな」

 

と思っている時にズバリそこを聞いてくれる質問。

これなら周囲の利益になり、教員も助かる。

 

「この説明はオーソドックスだけど、別解もあり得るんだよな」

という時に、そこに触れてくれる優秀生徒の質問。

 

要するに、教員にとって都合がいい質問をすれば、

内申点が上がるということではないか。

 

また、以前関わったある生徒は

音楽で96点を取ったのに3をつけられていた。

 

理由は「実技の試験中に周りがうるさかったから」と言われたとのこと。

 

また、英語で93点を取ったのに4をつけられていたこともあった。

 

こうした評価は、合理的なものもあれば、

ただの好き嫌いということも考えられるだろう。

 

「本当は5でもいいんだけど、嫌いだから3にしてやろう」

という意図的なものもいくらでもあるのかもしれないが、

何もそうでなくてもいい。

 

相対評価から絶対評価に代わって久しいが、

やはり同じようにボーダーというものは存在するはず。

 

3にしようか、4にしようかと迷った際、

 

教師の主観で好ましくない子には3、逆に好ましい子には情状して4。

評価をするのが人間である以上、

こういうことはあらゆる学校で無意識かつ大量に行われている可能性がある。

 

2020年【中学校等別評定割合(個表)】

https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2021/03/25/documents/17_04.pdf

 

そうした点に加え、公表されている内申の分布を見ると、

学校によってかなりの差が出ている。

 

例えば「千代田区麹町中学校は、

同じ問題を出す再テストによってとても高い内申が取りやすい」

news.yahoo.co.jp

などと言われてきたが、それ以外の中学校もなかなかである。

 

 

もちろん、単純に優秀な生徒の比率が高い学校だった、

という可能性もあるが、副教科でも差は顕著であり、

さすがにそればかりではないだろう。

 

内申については、

観点別評価など詳細な基準があるらしいが、

多少細分化したところで、

結局教師の主観が入試に影響する、という点は変わらない。

 

結局のところ、

 

公立というシステムが求めている扱いやすい生徒像から外れたり、

担当教師との相性が悪い生徒は如実に不利になるというのが

都立高校入試ではないだろうか。

 

長くなりましたが、

 

優等生型ではない子が公立中学に進学した場合、

 

・内申のために不本意な行動を強いられるストレスフルな3年間

(東京都は中3の内申が記載されますが、ほかの県は・・・)

 

・50台後半以降の高い内申=都立最上位校をほぼ諦める

 

という2択を強いられます。

 

そして、仮に努力の道を選んだとしても、

そもそも、副教科は努力でどうにもならない場合もある。

 

確かに世の中には、

オール5、またはそれに近い人も、一応存在することは存在する。

何をやってもそつなくこなす、

どんな先生ともうまくやっていけるような人かもしれない。

 

しかし、普通の学力優秀層(特に男子)には、

副教科はどうやっても無理という人も多いはず。

 

その上、仮になんとかなりそうな科目だとしても、

いい内申がつくという保証は全くない。

(担当教師との相性、学校がどの程度5をつける方針か、

学校の優秀層の比率など)

 

「落ちたら公立!」という強気出願ではなく、

抑え校を慎重に検討しろと言われる理由はこのあたりですね。

(塾の実績になる、という点も少しはあるでしょうけど)

 

抑え校といっても、

子供がのびのび過ごせる学校というのは必ずあるはずなので、

偏差値にとらわれずじっくり探して見てほしいですね。

 

二月の勝者の加藤君ではないですが、

部活の選択肢が多いのも私立の特権ですし。