中学受験家庭教師の国語メインブログ

23区西部在住の家庭教師が日々思うことを書いていきます。

朔と新

2021年の中学入試で頻出だった作品を読んでみました。

 

(2023年、昭和秀英の1月入試で出題。

2021年入試における大人気ぶりによって、

その後テキスト・テスト等で何度か目にしたことがありますが、

教え子は読んだことがない、または覚えていなかった様子・・・) 

 

事故により失明した兄(朔=さく)と、

兄の失明に責任を感じ、陸上をやめてしまった弟(新=あき)。

 

朔がブラインドマラソンを始めることになり、

そのパートナーに新を指名して・・・

 

というお話。(2020年出版 「いとう みく」著)

 

出題された学校は以下の通り。

(他にもあるのかもしれませんが)

 

1月13日 淑徳与野     仏教

1月14日 浦和明の星   カトリック

1月22日 ラ・サール    カトリック

2月2日  栄光        カトリック

 

宗教色のある学校の場合、

こうしたテーマは出題されやすいかもしれませんし、

わかりませんが、パラリンピックとの関連もあったのでしょうか。

 

さて、上記のようにこの作品は上位校の入試で連日の出題となり、

さらに、今年は市川と東邦大東邦(「水を縫う」)でもそうなりました。

 

正直な気持ちとしては、

国語の試験なので、できるだけ、

全員が文章を初見、という状態で勝負してもらいたいなと思います。

 

出題者は近年の社会状況、家族関係などを

反映した直近の文章を出したいのかもしれませんが、

もう少しなんとかならないものでしょうか。

(どこかに書いた気もしますが、記事が見当たらないので。)

 

 

さて、淑徳与野は出題箇所を確認できていないのですが、

浦和明の星ラ・サールは兄弟関係について聞いてきている一方、

 

栄光では視覚障がい者の日常生活について出題されています。

 

必要な配慮はしてほしいが、

(「コーヒーは目の前、おしぼりは左側」といったような声かけ)

ただただ同情され、庇護されるだけの存在になるのはつらい、

といった心情。

 

塾のテキストなどでも障がいに限らず、

貧困、被災者など時々出てきますが、

親切でしたつもりでも、安易な同情を拒絶される、といったケースが多いです。

 

このあたりは、

平和に生きている小学生が初見で読み取るのはなかなか難しいので、

演習やテストで触れた際に、そうした心情もあるのだということを

理解しておいてもらいたいと思います。

 

個人的な印象としては、 

 

事故により大きく傷ついた二人がぎこちなくお互いを思いやる中で、

ついに本音を伝えられるようになり、

それぞれが再生していく物語かなと思いました。

 

病院で、朔が新を信頼して医者の話を親と共に聞くよう頼み、

(親は自分を気遣って本当の内容を伝えないだろうから、弟に頼む)

その後、朔が新の手を強く握り返して真実を告げるよう促すシーンは

せつないけれどとても良かったです。