中学受験家庭教師の国語メインブログ

23区西部在住の家庭教師が日々思うことを書いていきます。

「水を縫う」

2021の中学受験界をある意味席巻した作品。

 

「刺繡の好きな男子高校生の話」ということだったので、

高校生活メインかと思っていたが、かなり違った。

 

 

主人公?と思った高校生は1章、姉は2章、母は3章、祖母は4章。

 

父の親友で、一家とも長年関わっている黒田が5章、

という連作形式で、心情を掘り下げていく。

 

 

・全体的に、時代を反映した多様性・個性がテーマなので

 大量に出題されたと思われます。

(他には、家族の理解というのもあるんでしょうね)

 

・個人的な印象としては、

 登場人物がさほど目新しい感じはしなかったので、

 全体的にはそれほど刺さりはしませんでした。

 冒頭からかっちり読み続ける気力がなくなってきて、

 拾い読みモードになったりなど。

 

ただ、5章の黒田は良かった。

彼のおかげで、この物語が味のあるものになっている。

 

「かつて、その光り輝く才能に憧れた友人の再起を期待し、待ち続ける心境」

これは大人が読めばうんうんと思いますけど、

もし中学入試で出たら鬼ですね。

 

もちろん、

一握りの本当にできる人であれば十分わかるとは思いますが、

難関校受験者でも大半はお手上げだと思います。

 

それ以外にも、彼の気持ちが報われる部分が温かく、とても良かった。

もし気になる方がいれば読んでみてください。

 

・他の章の内容は、中学入試のテキストなどで見たことはあるよ、

 となっていて欲しいかな。

 

 

※余談

 

「毎月給料もらってくるだけが唯一の取り柄やもん」という

 母の葛藤は、2018開成を思い出しました。

 

そういう現代的なテーマの出題は、

もちろん理解できるのですが、

ちょっと軽い感じがしなくもないです。

 

そういう話を読んだことがあるか、授業で解説されたことがあるか、

という前提知識で結構対応しやすくなりますからね。

 

では、そうじゃない話とはどういうものなんだ、と言われると

どの文章でも未知のテーマというのはそうそうないので、

実のところ、差がないのかもしれませんが。

 

例えばですが、2017・2021の麻布の国語の問題は、

視点こそ違いますが、

典型的な、麻布の好む主題だと個人的には考えています。

 

小学生の感想はどうでしょうね。

「動物(17鹿・21ガゼル)が出てくるのは同じだね」という感じかも。。