中学受験家庭教師の国語メインブログ

23区西部在住の家庭教師が日々思うことを書いていきます。

「異国のおじさんを伴う」

森絵都 作。

 

2013に麻布が「竜宮」を出していますが、全体的に内容は大人向け。

「竜宮」以外に中学入試に向いた作品は・・・

強いて言えば「思い出ぴろり」くらいな印象。

 

※2019に都市大等々力も出しているらしいが未確認。

 

以下せっかく読んだので

 

「藤巻さんの道」

 

道だけを被写体にした写真集(実在)から始まるお話。

職場でとても感じがよく優秀な藤巻さん好みの道は意外なものだった。

 

 

人が密かに抱えている心象風景がテーマ。

この話では、隠そうと思えば隠せたところではあるので、

実は藤巻さんには「主人公に現状をなんとかして欲しい」

という気持ちがあったのかもしれない。

 

 

「夜の空隙を埋める」

 

おそらくアメリカで暮らす日本女性とその隣室のインド女性の物語。

インド人女性の名前に少しコミカルな響きがある。

物語は大きく展開せず、二人の来し方が綴られる。

 

「クリスマスイヴを3日後に控えた日曜の・・・・・・」

 

新宿伊勢丹で起こった出来事が周囲を勇気づけるお話し。

些細な出来事を拾って作品に仕上げている感じ。

 

「クジラ見」

新婚旅行でクジラを見に行くことになった新郎。

「藤巻さんの道」とは違う形で人の色々な側面を描く作品。

 

 

「竜宮」

 

麻布はこの作品のように、

いわゆる「いかにも中学受験でよく出るだろうな」という作品

(どこの国語の先生でも共感する王道のいい話、的なもの)

ではないが、佳作というものを見つけてきて

出題していることが多いです。

 

多くの難関校と比べてみても、

どういう生徒が欲しいのかが本当にはっきりしている

と思うので、国語の文章を見て「いいな」と思った人に受けて欲しいですね。

 

 

さて、作品に話を戻すと、

 

単行本のコンセプト通り、これも大人目線の作品で、

ライターをしている主人公が若き日に犯した過ちに関するエピソード。

 

タイトルの意味は後でよくよくわかるようになっていますし、

全体的にうまく作ってあります。

 

 

また、この本の他の話は正直

なるほど、そうかそうか」という感じの読後感なのですが、

 

この作品だけはそうではなく

人によっては涙腺を刺激されるであろうお話となっているので、

この作品だけでもぜひ読んでいただければ嬉しいところ。

 

 

waldstein1804.hatenablog.com

 

 

 

「思い出ぴろり」

 

修善寺で佇む主人公に声をかけてきた葬儀屋さんの男性。

ちょっとミステリーっぽい感じになっています。

 

「ラストシーン」

 

飛行機の中での舞台劇。

ビリー・ワイルダー監督の映画「情婦」のラストシーンをめぐるお話。

この作品は社会派の要素をからめており、

そのあたりも考えるとやや深みがあるでしょうか。

 

※「情婦」はアガサ・クリスティ検察側の証人」が原作で、

小説版と戯曲版で結末が違うとかあるようです。(未読・未見)

 

映画はとてもいい作品なので、人生で一度は見て欲しいですね。

見ていないとこの話にもいまいち乗れないと思います。

 

桂川里香子、危機一髪」

 

なかなか面白いタイトルかと思いますが、

読後は「そういうことか」とくすっとしました。

 

この本の中では、かなり軽く読める小品です。

 

 

「母の北上」

 

連れ合いを亡くした母親についてのお話。

「北上」とありますが、

思い出の地を旅してまわる、とかそういう話ではないです。

 

老後の孤独感を独特に表現した作品に感じました。

 

 

「異国のおじさんを伴う」

 

表題作で、不思議な体験をする作家のお話。

主人公の悩みについてはあまり共感できなかったので、

そうですかというところ。着想は少し面白いんですけどね。