中学受験家庭教師の国語メインブログ

23区西部在住の家庭教師が日々思うことを書いていきます。

2004 開成中 国語

非常に低い受験者平均点で話題となった問題です。

 

椎名誠「平安元年のハマダラアカイエ蚊」『蚊學ノ書』所収

 

椎名誠三重県の島にキャンプに行った際、

蚊の襲撃を受けた顛末を書いたエッセイ。

 

この年で目立った特徴は以下の通り。

 

1.一切の傍線が引かれていない

 

これはかなり珍しいと思います。

 

入試国語の問題では、本文に何か所も傍線が引いてあり、

各設問に対応していることが通常です。

 

しかしこの年の問題には傍線がないため、

設問が要求している内容がどこなのかは

各自で見当をつけなくてはなりません。

 

これは結構動揺した人もいたと思います。

入試では本当に何があるかわかりません。

 

2.設問で何が求められているのか、よく考える必要がある

 

例えば問3では、設問自体が300字を越えており、

まず、問題を解く前提として脱文補充を要求し、

(戻したら内容がわかりますよね、と触れているだけで配点は無し)

設問がどこを聞いているのか特定させます。

 

その上で、話が本題からそれてしまった経緯

蚊の話をしていたはずがいつのまにか

カエルは可哀そうだ」という話になっていた)を3段階に分け、

それぞれの内容を具体的に書かせる、というものになっています。

 

ここで受験生は、まず脱文補充を片付け

その後、補充箇所の近くにおける

話の流れが3段階になっているということを頭で整理し、

それでは具体的にどのように3つに分かれているのかを

それぞれの内容をまとめて書き始めることになります。

 

思考力、読解力の差が出ると思います。

 

 

実は、この年の問題を後日取り上げて解説した際には、

特に難しい問題だとは思わなかったのですが、

(小学生の頃から椎名調にもわりと慣れていますし)

 

いきなり入試本番でこのような出題がなされた場合、

問題形式及び分量、本文の長さによる時間切迫、独特の文体も含めて

対処はなかなか難しかったように思います。

 

受験者平均点は28.4点(85点満点)と記録的な低さになっていますが、

漢字が5問で10点だとした場合、記述の得点率はおおよそ25%程度となります。

一方、合格者平均点は40点あるので、

合格者は記述部分のみでおそらく4割程度は得点できていたことになります。

 

このような、難問ではあるがしっかり考えればわかる、

といった問題が出題された場合は、

傾向の変化にその場で対応する力やメンタル面も含め、

実力がはっきり出るということが言えるのではないでしょうか。

 

国語に強みを持つ受験生には有利な出題だったのかもしれません。

2021 麻布中 国語

 

2021年の問題文は、自立についてのお話。

とても麻布らしいなと思いました。

 

 津村記久子「河川敷のガゼル」(『サキの忘れ物』所収) 

 

 

 

問1~問7あたりまでは、本文の内容をそのまま使えば

ある程度まとめられる問題ではないかと思います。

 

一方、問8以降については、

単純に本文の表現をまとめるだけでは難しくなっています。

 

問8についてはどう書いていいか悩んだ人もいた気がしますが、

あくまで傍線部に忠実に書いていくとこんな感じなのかなと思います。  

(困ったらそういう方針がいいと思います。

なかなか簡単にできるものではないでしょうが・・・)

 

「表面ではガゼルや住民のために活動していると装いつつ、

本当は自分のためにどうしてもガゼルを残したいという、利己的な思い。」

  

「欺瞞」といった言葉を使ってもいいかもしれませんが、

普通の小学生では無理ですね。

 

問9~11については

少年(共感)→ガゼル

 

という流れに主人公を追加し

 

主人公(共感)→少年(共感)→ガゼル

 

ということだけわかっていれば部分点はもらえるでしょう。

そのくらいは多くの人が出来たのではないでしょうか。

 

さらに、どういう共感なのか、

その中身までしっかり説明できた人は問11が高得点になると思います。

 

麻布中入試 国語 出典一覧

※随時追記予定 

 

2024 真下みこと「やさしいの書き方」 ・自立の芽生え

小説宝石 2023年9月号所収)

 

※問題用紙には著者名「宮下みこと」とありますが、

調べても検索等に全くヒットしないので誤植を疑いました。

おそらく誤植で間違いないと思います。

→学校公式HPに記載されていましたので間違いありません。

 

2023 寺地はるな「タイムマシンに乗れないぼくたち」 ・孤独 

   (同名書籍所収)

 

2022 くどうれいん「氷柱(つらら)の声」 ・震災   ・高校生女子主人公

芥川賞候補作)             ・偽善的なコンクールへの疑問

 

2021  津村記久子「河川敷のガゼル」   ・自立   ・大学生主人公

         『サキの忘れ物』所収 

 

2020  宮下奈都「まだまだ、」      ・自立   ・女子主人公
        『つぼみ』所収      ・恋愛

 

2019  安東みきえ「明日への改札」    ・家族   ・女子主人公

         『天のシーソー』所収  ・姉妹

 

2018  深緑野分「緑のこどもたち」    ・他者理解 ・ファンタジー

        『飛ぶ教室 第50号』所収  ・全編出題

 

2017  吉野万里子「おれ害獣」      ・自立   ・動物(シカ)主人公

         『ロバのサイン会』所収 

 

2016  辻村深月「1992年の秋空」     ・姉妹   ・女子主人公

        『家族シアター』所収    
                    
2015  山本甲士「らいぎょ 雷魚」    ・世代間交流 ・大学生主人公         

        『あたり 魚信』所収    ・家族

                     

2014  大山淳子「ミスター・クリスティ」 ・友情  ・物(自転車)主人公              

        『あずかりやさん』所収  ・家族    

 

2013   森絵都「竜宮」          ・世代間交流 ・大人主人公

        『異国のおじさんを伴う』所収  
                     
2012  堀江敏幸「トンネルのおじさん」  ・家族                

                             『未見坂』所収

 

2011  井上ひさし「あくる朝の蝉」     ・兄弟   ・家族        

                                  『四十一番の少年』所収    ・貧困

 

2010        薄井ゆうじ「木登り牛」                         ・風刺   ・動物(牛)主人公

                   『十二支の童話』所収 
                         

2009  瀬尾まいこゴーストライター」   ・兄弟          

                        『Re-born はじまりの一歩』所収

 

2008  安東みきえ「循環バス」       ・いじめ  ・女子主人公

                              『夕暮れのマグノリア』所収

 

2007        浅田次郎「青い火花」        ・家族
                 『霞町物語』所収

 

2006 フィリッパ・ピアス「ロープ」 片岡しのぶ訳 ・友情 ・外国文学

  「8つの物語――思い出の子どもたち」所収 

 

2005  重松 清 「タオル」        ・家族 ・祖父の死  

         『小学五年生』所収

 

2004  辻内智貴 「信さん」        ・友情

 
2003  レイ・ブラッドベリ「宇宙船乗組員」 ・家族   ・外国文学                          

   『ウは宇宙船のウ』所収 大西尹明訳  ・SF

 

2002 マイケル・ドリス「朝の少女」     ・家族   ・外国文学

   灰谷健次郎訳             ・姉弟

 

2001 吉本ばなな「みどりのゆび」        ・生と死

        『体は全部知っている』所収

 

2000 タイトル調査中              ・論説 ・随筆

   大問1 松本仁一「異文化の根っこ」

   「日本語のこころ ベスト・エッセイ集 00年版」所収

 

   大問2(物語型随筆。玉川上水沿いの酒屋にあったマロニエの木を通した、

      町の移り変わりについての感傷的な文章)             

   の2題出題。

 

1999 マーガレット・マーヒー「フッキーウォーカー・ダンサーズ」 

   青木由紀子訳     『空中の王国』所収 ・ファンタジー ・外国文学

                        ・生き方

 

1998 加藤多一 「草原―ぼくと子っこ牛の大地―」 ・生と死

                         ・家族

 

1997 笹山久三 「やまびこのうた」      ・少年少女の成長

 

1996 薄田泣菫 「利休と遠州」        ・時代物  ・くすっとする教訓話

 (すすきだ きゅうきん) ・全編出題(ただし一部カットあり) ・青空文庫収録

 

1995 辻仁成 「ミラクル」          ・母の死と成長

 

1994 禾呈 王韋(チョン・ウェイ)「白い貝がら」・友情  ・外国文学

   中 由美子訳               

 

1990 黒井千次「子供のいる駅」        ・ファンタジー 

(おそらく大丈夫かとは思いますが、過去問での確認は取れていません)

ウミウシ

 

 

先日発表された、もの凄い再生能力について。

他でもニュースになっていますが、

このサイトだと頭部だけで動いている動画が見られます。

 

gigazine.net

 

最近読んだ本でウミウシアメフラシは貝類だということを知りました。

 

タツムリ・ナメクジが貝類だということは一応知っていたものの、

海の生物については考えたこともなく、それだけでも驚いていたところ、

このニュースも。

 

まだまだわかっていないことはたくさんあって面白いですね。