中学受験家庭教師の国語メインブログ

23区西部在住の家庭教師が日々思うことを書いていきます。

語彙力の重要さ

直近のサピックスオープンより

 

「まゆをひそめる」

 

という語句が、傍線部の一部に含まれていました。

 

(息子に離婚することを告げた両親。

息子は受け入れられず、ひたすら笑います。

眉をひそめる両親。)

 

これがマイナスの気持ち、

ということはだいたいわかるとは思いますが、

気持ち言葉をはっきり書けないと、

本来大きく減点だと思います。

(採点基準にもよるが、

 受験生の側が、基準が甘いことを期待してはいけない)

 

まず、

「問題行動にまゆをひそめる」というのが

一般的な使い方の一つです。

 

例えば「嫌だ、不快、迷惑

 

しかし、設問のシーンでは、

自分たちに(離婚を告げる)負い目があるため、

相手を一方的に責める上記の言葉は適切とは言えません。

この点が難しかったですね。

 

戸惑い、疑問、怪訝に思う、いぶかしむ」という感じがいいと思います。

 

共通する感情は

なんでこんなことするのかしら

 

というものです。

こうした要素を考えたことはありますか?

 

そこから、迷惑、戸惑う、など、

各系統に派生させていくことができます。

 

こういった視点が持てる人はどんな問題でも対応力があります。

語彙が弱い人はなかなか難しいかもしれませんが。

 

ですので、言葉の意味についても、

機会に応じてできるだけ話すようにしています。

 

(英単語を覚える際に近いことを言われたりもしますね。)

 

 

「(熱意に負けて)バカには勝てないな」

 

このニュアンスをあきれる」としか思えない→0点の可能性

 

気持ち言葉を間違えた場合、

入試では即0点になる可能性がある、と個人的には考えています。

 

・主人公はなぜ泣いているのですか

 

という問いに

 

「お母さんが死んで嬉しかったから」

 

という答案(もちろん虐待母、などではない文章で)を書いたら

「お母さんが死んだ」という理由が合っているとしても、

果たして部分点がもらえるでしょうか。

 

アルバイトの大学生などが採点し、

偏差値分布も出す必要がある大手模試は

キーワード採点でしょうが、本番の入試はそうではありません。

的外れな答案を丁寧に救済して、部分点を与える時間の猶予もありません

どうなるかはわかりません。

 

と、書いたところで例を見てみます。

 

「あいつは野球バカで常識がないから・・・」

 

→「野球バカ」=「野球しかやっていない」=「他がダメ

 これなら「バカ」は文字通りのマイナス評価ですから

 「あきれている」でいいです。

 

しかし、こうした使い方もあります。

 

「あいつは野球バカだから、今年の甲子園が中止になったのはやるせない」

 

→野球バカ=「野球しかやっていない」=「頑張ってきて素晴らしい

 この使い方では、「バカ」がプラスの評価となっています。

 

「まゆをひそめる」の場合は

マイナスの気持ちだということは普通わかるのでまだいいとしても、

 

これでは正反対の気持ち言葉を書いてしまう恐れが出てきます。

非常に危険です。

 

この例でも、考えるべきことは同じでした。

 

二つの使い方に共通するのは

 

「野球バカ」=「野球しかやっていない」

 

ということです。

 

それをマイナスと見るか、プラスと見るか。

 

それは人それぞれでしょう。

 

問題文でも同様です。

色々な人が登場します。

 

自分の価値観で、その人の考えを勝手に決めつけてはいけません。

 

ではどう見極めるのか。

 

文脈で読み取るしかありません。

 

発言全体がプラス(文末が、やるせない=同情している)

だったら「野球バカ」もプラス

 

発言全体がマイナス(文末が、常識がない=不満を抱いている)

だったら「野球バカ」はマイナス

 

どう考えても当たり前のようですが、

多くの人は意外とやっていません。

 

確かに、傍線部の至近には、

はっきり誰でもわかる、とまで言える情報はないのですが、

 

「協力する」

「1%の可能性で何かが起きたら、自分も変われるかも」

「親にお笑いをやりたいと話そう」

 

とあるわけですから当然プラスの使い方ということになります。

 

この問題の正答率も低かったですね。

 

語彙力の高い人にとってはかなり楽な部類で、

 

解答作成の際、

「辛いことに向き合わない主人公」

という、この文章のテーマを理解している必要もありません

 

本文をほとんど読まなくてもできてしまう、

いわば「語彙力問題」と言え、

労せずして大差をつけることができます。

まさに楽な問題です。

 

こうした記述問題が複数出されれば、

語彙力の弱い人は壊滅必至ですので、

 

語彙力は読解力と並ぶくらい重要だ、

と言われるのもわかるかな、と思います。

 

仮に、文章を読むのが嫌いな子でも、

とにかく、語彙力だけはなんとかしていかないと、

取れる点数にも自ずと限界が出てきてしまいます。

 

(もちろん、学校によってはこのような内容は必要ありませんが)

 

※以下、補足

(小学生には、さらに難度が高いです)

 

該当の発言内容だけではよくわからないような、

相当複雑な物語文になると、

文章全体から読み取るしかないので難易度が高くなります。

 

その際に把握することが必要になるのは、

登場人物の性格、境遇などです。

 

仮に、野球やスポーツ、体育会系の考え方が嫌いな人、

勉強を疎かにして苦労した人などであれば、

当然「野球バカ」はマイナスの可能性が高くなります。

 

(しかし、人間単純ではないので、ある物事に対し、

マイナスだけでなくプラスの感情も含まれていることもあります。

人間の感情は奥が深いですね。

大学入試でも物語文を記述で出してほしいのですが、

国立大を受けるような上位生には簡単だから出ないのでしょうか。)

 

よく言われることですが、

登場人物をしっかり把握することはとても大切で、

色々なところに響いてくるわけです。