「トムは真夜中の庭で」で有名な著者の、表題通りの短編集。
2002年の出版なので、著者晩年の作品。
以下、備忘も兼ねた簡単な感想
◎「ロープ」 1986年(初出?年。以下同じ)
2006年麻布中で出題。
まだ幼さを残した男子の矜持・友情などが瑞々しく描かれている作品。
こうした外国文学の児童作品からも
心情描写をうまく出題しているのは麻布らしい印象。
この作品以降、麻布は外国文学を全く出さなくなってしまったが、
この路線は続くのだろうか。
著者は麻布で出題された年に亡くなっている。
「ナツメグ」 2000年
高齢者の切なさがテーマと言えそうだが、
ちょっとホラー仕立ての作品。
◎「夏の朝」 2000年
主人公の優しさが胸に沁みる佳作。
感動を誘う派手な演出などはないが、
名前も出てこない少女に対し、幸あれと思わざるを得ない。
○「まつぼっくり」 2000年
幼い少年のほろ苦い成長物語。
幸せだった昔にはもう戻れないことを受け入れる。
○「スポット」 1976年
特筆すべき筋立てはないが、
ハチに追いかけられる夏の一日の情景がありありと感じられる小品。
「チェンバレン夫人の里帰り」 2000年
「ナツメグ」に続いての(やや)ホラー仕立て。
主人公一家が見たものとは・・・
○「巣守たまご」 1989年
巣守たまごとは、
鶏に卵を産むべき場所を教えるために置いておく疑似卵のこと。
母を亡くした少年が、思い出を守るために取った手段とは?
「目をつぶって」 1980年
話としては展開が予想でき、それほどの感慨はなかったが、
優しいお話ではある。