中学受験家庭教師の国語メインブログ

23区西部在住の家庭教師が日々思うことを書いていきます。

「最果てアーケード」

小川洋子

 

「漫画の原作として書かれた連作短編集」というのが珍しい。

 

恥ずかしながら著者作品は初めて読んだところ、

とても静かでありながら死の影がちらつく、

もの悲しさを帯びた作風に感じました。

 

先日目にした日経のインタビュー記事によれば、

ノーベル文学賞の候補にも取りざたされているということのようですが、

確かに実力者であり、独自の世界観だなと思いました。

 

さて、この本は中学入試では頻出で、

出版翌年の2013に学習院・筑波大付属・愛光・千葉日大

その後も文教大付属(2016)・自修館(2018)・清泉女子(2021)

で出題されています。(全て「百科事典少女」という短編)

 

この百科事典少女という話は子供たちが主人公であり

この本の収録作品の中で、

ほぼ唯一中学入試にも耐えうる内容だと思います。

 

※追記

中学3年生の教科書(東京書籍)にも載っているみたいですね。

 

読書が好きな主人公の女の子と、

膨大な読書量によって「お話」に飽きてしまい

百科事典を好む少女(Rちゃん)のお話。

 

二人が(わりとほのぼのと)交流するシーンまでを

出題している学校ばかりかな、と思っていましたが、

 

・愛光は大きなネタバレになるシーン

 (上記の直後)まで出題している

 

・自修館、千葉日大は愛光よりさらに先のシーンまで出している

 

・清泉は調査不足によりどの部分を出題したのか不明

 

といった感じになっています。

 

※この作品は自修館・千葉日大出題のシーンに至って

 冒頭の伏線が回収されており、そこが本当に素晴らしい(個人の感想です)

 

入試問題で何度か見た際、

続きはどうなるのか結構気になっていたので、

まさかこんな展開とは思いませんでした。

とても切なく、美しい話です。

 

難しすぎるかもしれませんが、

このあたりを前半とセットで

記述で出してくれるところがあると嬉しい気もします。

 

 

以下、一つ一つの短編には触れないことにしますが、

 

架空のアーケードにあるとてもニッチで不思議な店

(義眼屋、レース屋、勲章屋など)をメインに

切なさを感じるような物語が多く、

 

それぞれそれなりに面白いものの、

 

全編を通じて実はある要素が含まれており、

後半はその点について読者に示唆する内容となっています。

 

ということで、読後感としてはややホラーというか

ミステリーチックな要素も感じました。

 

ご興味のある方はどうぞ。