中学受験家庭教師の国語メインブログ

23区西部在住の家庭教師が日々思うことを書いていきます。

「あずかりやさん」

大山淳子

 

これは第1作ですが、

 

「あずかりやさん」は人気シリーズとなったようで、

現在4作?まで刊行されています。

 

以下、収録順に

 

 

「あずかりやさん」

 

表題作であり、

1日100円でなんでもあずかる商売

「あずかりや」の設定などが説明されています。

 

が、途中からいろいろな展開があり、

思ったよりも読ませるお話です。

 

あとは、「のれん」が主人公という点はかなり珍しいと思います。

 

 

「ミスター・クリスティ」

 

こちらは自転車が主人公。

 

2014年の麻布中で出ています。

 

個人的にはなかなかに好きな話なので、

表紙に水色のクリスティ(自転車)のイラストがあるのは

うれしいところでした。

 

「ミスター」というのは

「日本に1台しかない」「自転車界で俺はスターだからな」と

自他ともに認める立場である彼への敬称ですが、

 

相棒の少年だけでなく、実は彼の成長物語でもあるんですよね。

 

タイトルがいいなと感じます。

 

また、入試問題では省かれていた、

クリスティがどうなったかという結末も描写されています。

 

離婚絡みで悩む少年の話ですが、

経済面を絡めている点は他であまり見ないので

もっと問われてもいいように思います。

 

今のところ出題を確認できたのは中村中学校2016のみです。

問題は比較的易しいので、

今回のテーマを理解、インプットするにはお勧めです。

 

出題箇所は少年が悩むところまでで、

解決してどういう心境になったのか、

という部分はカットされていますが・・・

 

 

トロイメライ

 

ガラスケースが主人公というこれまた珍しい設定。

 

あずかりやの店主の人間性

周囲に好影響を与えるという、

これも心温まるお話ですが、

 

この単行本の中ではクリスティについで出題しやすそうかな、

 

と思ったら

2016年に立教新座中で出題されていました。

 

「正論っていうものは、人の心を動かしません」

 

というセリフが出てきますが、

確かになかなかその辺は難しい。

 

山本五十六の有名なセリフもありますが、

小学生と接しているとさらに実感できる気がしています。

 

 

「星と王子様」

 

あずかりやさんでちらっと登場し、

何か紙を預けていった女子小学生と、

 

主にクリスティで登場する高校生が

かなりの年月を経て邂逅します。

 

うーん、結構むりやり遭遇させているような気もします。

 

しかも、え、あの心が澄み渡っていた優しい少年が、

こんな感じになってるの?という・・・

 

加えて、やや唐突に星の王子様が出てきており、

??というところですが、

こちらについては次作で明かされます。

 

作者は脚本を書かれている方のようなので、

伏線の張り方はなるほどなと思いました。

 

 

「店主の恋」

 

この作品は、タイトルに反して不穏な描写が挟まれています。

これまでの作風からするとやや意外なところでした。

 

挿入されているタバコ屋のおばあさんの話もいいですね。

 

ここでも、

時系列が前後する「星と王子様」でこっそり伏線が張られていました。

 

ちなみに、この作品の主人公は猫です。

 

 

「エピローグ」

 

超短編

全体というよりは「店主の恋」の続き的な内容。

 

そちらの本題?の話も少しあるのですが、

 

むしろ、猫のその後について、

そう来たかというところで、味わい深いです。

 

残り少ない猫生、なるほど、

そのほうが幸せなのかもしれないけれど。