中学受験家庭教師の国語メインブログ

23区西部在住の家庭教師が日々思うことを書いていきます。

現場思考問題の考え方(社会)

一部の学校で出題され、大学入試改革なども踏まえ、

今後増えていくのか?とも言われている現場思考問題。

 

とはいえ、現状、

社会で現場思考問題を出す学校はあまり多くありません。

 

1.ほぼ純粋な現場思考

課題文の内容に一部誘導も入っているものの、誘導が最も少ない形式。

 

麻布 現場思考の割合も最も高い。

   社会40点の配点のうち、8割程度はあると思われる。

 

2.文章誘導型

課題文で一定以上の誘導がある形式。

 

渋谷幕張 麻布よりは誘導が多いので少しは解きやすい形式。

     現場思考問題の出題比率は高め。

     得点比率も5割~6割くらいでしょうか?

    (学校が配点を公表していたかどうかはちょっと不明です)

 

3.資料誘導型

参考資料などを提示し、誘導を行う形式。

 

海城 長文記述で有名ですが、実はあまり恐れることはありません。

   あまり見ないテーマで出してきますが、

   誘導に乗れば普通に書けます。

   記述力がある程度あることは前提ですが。

 

早実 最後の1問のみ長文記述がありますが、

   誘導に乗ればある程度書けると思います。

   海城よりは事前対策可能な一般社会問題が多いです。

   ニュースに詳しい人は楽勝でしょう。

 

渋々 現場思考の配点比率は1割程度でしょうか。

   資料がついていることが多いです。

   基本は誘導に乗ればいいですが、

   そうなっていないものは難しいです。

   比率が低いので、割り切るのも手。

 

4.混合型

・1と3のミックス→武蔵 誘導型は比較的解きやすいことが多い。

          現場思考問題の配点比率は5割くらいでしょうか

         (あくまで推定です)

         たまに、かなりの難問(解答不能に近いレベル)もあります。

 

その他の学校は上位校を中心に

「時々出す」「1問くらいは出す」

というところが多いので特別に意識する必要はあまりないと思います。

「全く出さない」という学校が多数派でしょうかね。

 

※他の男子トップ校としては参考までに、

 

筑駒:ほぼ記号問題かつ基本問題中心ではあるが、

  「二つ選べ」「全て選べ」という形式ばかりのため、

   難易度は結構高め。

 

開成:ほぼ基本問題中心、

   一部で独自問題を出すので一応対策は必要。

 

いずれも、難問ではないものの、

受験者レベル的に合格には高得点が必要です。

 

 

さて、前置きが長くなりましたが、

こうした現場思考問題について、

今回のサピックスオープンB問題を題材に少し考えてみたいと思います。

 

例えば(3)について。

 

「なぜ日本海側ではガラスの層がある瓦を多く用いるのか?」

 

まず、この問題は資料型といえます。

資料型の場合は、誘導に乗れば書き進めていける、

とっつきやすいものも多いのですが、

この問題は誘導だけで解けるものではありません。

 

考え方としては

1.日本海側→降雪が多い という思考

 

これは今回のような資料が無くても

誰でもわからなければなりません。

 

2.降雪が多い地域の家屋の工夫について という思考

 

  から

 

  雪の重みで屋根が潰れないようにする

 →傾斜をつけ滑り落ちやすくする

 →合掌造り

  

まあこれも普通は考えると思います。

 

しかし、現場思考問題ではこれだけではダメなことも多いです。

 

現場思考問題というのは、丸暗記してきた内容ではなく、

その場での論理的な頭の使い方断片的な知識を使いこなす能力、

教養的な背景知識(社会自体への興味を見ているのです。

 

そのあたりを踏まえ、

 

自分で解いた際は

表面が粘土でなくガラス→「合掌造り同様に、雪を滑り落とす目的かも」

 

と反射的に考えたあと、

  

「そもそも、それで滑り落ちやすいかどうか、

どのくらい効果があるのかという根拠が、ちょっと微妙かも」

「これが答えだと、現場思考にした意味があまりないかな」

 

と考えたので、保留にして次の項目に移りました。

(もちろん、何も思いつかなければ

ここで思いついたことを書くしかありません。

 

ただ今回は、サピの解説によると滑り落ちやすくなっている、

という点でも部分点、または満点を貰えそうですね。

 

(書き始めた当初は、解説を見落としていたので、

「典型知識だけで即答してはダメなんですよ」

という構成にするつもりでした。

少し説得力が弱くなってしまっていますがご容赦ください。)

 

しかし、

既習の内容では的外れだった

高得点を狙いたい

「理由を二つ書け」という問題だった

 

という場合も十分考えられます。

 

3.では、どうすればいいのか。

 

日本海側での降雪対策として、

反射的に合掌造りを考えたのは悪くありません。

(他には雁木や、道路の融雪設備などもあります) 

 

そこから、

「この問題にも当てはまるのかな?」

もう一歩考えられるといいでしょう。

 

しつこいですが、

現場思考問題は、そうした誰もが習っている内容の習得とは

異なる能力を見る目的で出されることが多いですから、

 

「とりあえず合掌造りは思いついたけど、

これを単純に使っていいのかどうか。

現場思考問題だから、違うかもしれないよな。

この資料を見て、本当にそういう構造と言えるだろうか?

仮に問題ないとしても、他にも書く内容はないだろうか。

 

としっかり検討できると

0点を防ぎやすい、高得点を取りやすい、ということになります。

 

そこで、資料3つ目の断面図についても考えます。

資料が複数ある場合、

普通の学校は「できれば全部使ってね」と考えています。)

 

・別資料の写真のように傾斜がついていない 

 (ので雪を落とすことばかりに気を取られない)

 

・瓦は粘土だということが意識できる

 

・ガラスがカバーのようになっていることがより意識できる

 

そのあたりに考えが及べば正解することができるでしょう。

 

「瓦に水がしみこみにくく、長持ちする」

 

もちろん僕も瓦については詳しく知りませんでしたが、

この問題は数秒で正解することができました。

 

社会への興味には大きな個人差があり、

背景知識の量(できるだけたくさんあることがベターですが)

についてはその場ではどうすることもできませんが、

 

繰り返しですが、現場思考問題を解くための考え方として

 

「普通に習うことと違う内容を聞きたいのではないか

という点も意識しておくことは大切だと思います。

 

現場思考問題→典型的に習う知識を

       ただ吐き出すことはあまり求めていない

 

という点はおそらく集団塾でも

あまり教えられていないのではないかと思います。

模試で差がつかなくなりますからね。

 

(14)については難問と感じた人も多いと思います。

しかしこの問題文にかなりの誘導がありました。

 

上記パターンで言えば

2.の文章誘導型の解きやすいもののような感じです。

 

「なんだ、これでいいんだ。次はこうやろう。」

ということを意識して、

苦手意識を持たないようにしてくれればと思います。