中学受験家庭教師の国語メインブログ

23区西部在住の家庭教師が日々思うことを書いていきます。

4年週テスト 第12回(bc問題)

 

今回は四谷大塚(早稲アカYT)生向けの第12回週テスト、

国語の問題について。

 

気になった点がいくつかあるので書いてみます。

これから解く、という方はご注意ください。

 

 

 

内容は、出題ミスについてです。 

 

一応、僕は四谷大塚出身なので、

こういうことを指摘するのは非常に残念です。

 

ちなみに、下に行くほど問題が大きいと考えています。

 

 

 

1.大問三 問八に脱字がある

 

「鼻じろが殺されていなくなってしまうとさびしくだろうと

 

「さびしく『なる』だろうと」としたかったのだろうと思います。

細かいといえば細かいですが、もちろん、無いに越したことはありません。

 

 

2.大問三 問八の抜き出し問題に不備があり、解答不能

 

問八では、

A・Bの空欄に当てはまる言葉を

「それぞれ7字で本文中から抜き出せ」となっており、

 

解答は

A かなしい気持ち B 剛毅な彼の本性

 

が答えとなっています。

 

Bは問題なく本文にありますが、

 

Aについては、本文が「悲しい気持ち」(6字)になっていますので

条件を満たすことができません。

 

本文中に「かなしい気持ち」がないかどうか一応確かめましたが

おそらくありませんでした。

 

また、解説には

「172~178行め(※注記 傍線部の直前)の描写から抜き出しましょう」

とありますので、出題者の単純なミスだと思います。

 

今回の出題文である

須川邦彦「無人島に生きる十六人」は著作権が切れていますので、

一応青空文庫で確認してみたところ、そちらでは

 

「かなしい気持ち」「剛気なかれの本性」となっています。

どうしてこうなってしまったのかはわかりません。

 

抜き出し問題では、作問者の検討不足などによって、

複数の正答がありえるケースなどもありますが、

今回は答え自体を出すことができませんので、

ちょっとひどいのではないでしょうか。

 

おそらく多くの人が、

「あれ絶対ここなんだけど、6字だ。どうしよう・・・」

 

と悩んだと思います・・・

 

 

3.大問三 問四について

  出題者の誤読により、選択肢に答えがないため解答不能

  

 本文には、

「大将さんははだかで、けらいがりっぱな毛皮の着物を着ているなんて、

 よっぽど、びんぼうな大将だ」

 

とあって、

 

けらい」が何をさしているのかを問う問題です。 

 

この点解説では、

 

川口(無人島で暮らすメンバーの一人)が

 

自分が夕食後の相撲で活躍した際に、

「鼻じろ」(島にいるアザラシのうちの一匹。川口がかわいがっている)を

「アザラシの横綱」と自慢している。

 

よって、(敬称の)「大将さん」というのも「鼻じろ」のことである。

 

と解釈し、そこから「けらい」=川口であると説明しています。

 

さらに「大将さんははだかで」という言葉からも

(はだかなので)大将が人間でないとわかります。

 

と述べています。

 

 

しかし本当にそうでしょうか。

 

少し上で書いたように、

この文章は漂流して無人島で生活する16人の話であり、

作中の季節はおそらく夏です。

 

(直後に「八月も中ごろになって、島の生活も四か月になった」

 という描写があります。)

 

となれば、人間が「はだか」でもおかしくないのではないでしょうか。

 

ましてこの問四のシーンは、

夕食後のすもう」を行ったあとの一コマです。

 

「りっぱな毛皮の着物」(川口=けらいとすればそうなるはず)など

着ているはずがありません。

むしろ「けらい」=アザラシ(鼻じろ)だとすれば当てはまります。

 

ここまでくると、

「『はだか』なので人間のことではない」とするこの解説は、

 

勝手読みに基づく解釈を行っているといわざるを得ません。

 

一応、文中に「ウミガメを狩り」ともありますので、

そこからも気候を推測することができますし、

 

青空文庫により、

この無人島はミッドウェー諸島の近くにある環礁だということも

念のため確認しました。

 

北半球の亜熱帯で、八月ですから暑くて当然といえます。

 

ダメ押しで、最後に救助される際、

はだかでは恥ずかしいので服を着た、という描写もあります。

 

また、別の要素としても、

 

本文に、

 

川口は鼻じろを「弟のようにかわいがっていた」とありますので、

それで、鼻じろが大将、川口がけらい

ということは通常、あり得ないのではないでしょうか。

 

最後に、

 

設問の初めに戻って、「びんぼうな大将だ」というのも、

当然、相撲で勝って自慢げに語る川口を茶化したものであって、

アザラシが貧乏だと茶化したところで、何も面白くありません。

 

いちいち書いていますが、当たり前のことかと思います。

 

 

ということで、長くなりましたが、

この問題の「けらい」はどう読んでも、

アザラシの「鼻じろ」しか考えられません。

 

文中でも明らかにそう読める気がしますが、

なぜこんな問題になってしまったのでしょうか。

 

選択肢に正答がないので受けた人は悩んだことでしょう。

本当にひどい問題だと思います。

 

 

久しぶりにこのような問題を見たのでつい長々と書いてしまいました。

この問四については、

以前にも見たような気もするのですが、

これは僕の気のせいかもしれません。

 

 

さて、今回は出題ミスについて書いてみました。

 

残念ながら、入試本番でも、

 

出題ミスはそれほど珍しいものではありませんので、

もしこのような事態になってしまった場合、焦らないでください。

 

解答の出せない問題はどうせみんな解けないのですから、

なんだか解けそうもないぞ、という問題が出てきたら、

そこにこだわらず、最後まで解ききることが一番大切です。

 

もしも、その問題に固執してしまった場合、

その問題だけは全員正解にしてくれますが、

(学校がミスを認めた場合のみ、ですが・・・)

本来なら解けた問題の分は正解にしてくれません。

 

また、その問題は全員正解になってしまうので、

得点差をつけたかった受験生にとっても

非常に迷惑な事態となります。

 

しかし、非常に厳しく、理不尽なようですが、

受験当日も何があるかわかりません。

 

アクシデントへの対応力も実力の一つという面もありますので、

今回のようなケースも意識して覚えておき、

多少の想定外があっても合格できる力をつけて欲しいと思います。