中学受験家庭教師の国語メインブログ

23区西部在住の家庭教師が日々思うことを書いていきます。

国語の力とは(その1)

 

世の中で抽象的に言われている国語の力。

この点について、自分なりに書いてみたいと思います。

 

まず、大きく分けると

「文章を理解する力」と「問題を解く力」に分かれると思います。

 

このうち「国語の力」として通常の文脈で使われるのは前者でしょう。

受験のみならず人生全般にわたって必要とされるものだと思います。

 

ただ、各年代・立場などによっても必要とされる具体的な内容は違うでしょう。

契約書などを読んで理解する力であったり、

感情的にならず、物事を論理的に考える力であったり。

また、テストとなると時間的制約が厳しくなりますから、

効率的に理解する必要も出てきます。

 

ここでは、受験生の中でも中学受験生に絞って考えてみることにします。

中学受験生が文章を理解するにあたって必要な力とは何か。

 

まずは語彙力です。

知らない言葉が多すぎるようでは、文章を理解するどころではありません。

言語を学習する際に単語を覚えていくのと同じです。

 

本来、日本語は母国語ですから、

もしそうした単語に触れる機会が普段からある場合、

わざわざ覚える必要はないはずです。

 

しかし残念ながら、ほぼ全ての中学受験生の語彙力は、

入試で求められているレベルに到達していません。

 

よって、慣用句や気持ち言葉、四字熟語などを覚える必要が出てきますが、

読書量の多い子(特に、自分より年長用の図書にまで手が出ているような子)

でしたらこの作業は比較的少ない時間で済むことになります。

 

言葉の力は本当に大切で、

わからない言葉が出てくると読み飛ばすか、

勝手に自分のわかる言い回しに変えて読むことになります。

この点は音読をさせてみると非常によくわかります。

 

平板でも文字通り読めていればかなりいい方で、

多くの子は読み間違いだらけです。

人によっては、聞いているのが辛くて耐えられない、

という読み方しかできません。

(この点は、授業参観でも比較できるかと思います)

 

音読を勧める本なども多いですが、

この方法で低レベルの子を改善するには

尋常ではない労力がかかりますので、

(まず取り組むのがストレスでやろうとしない。

読むのが遅いので時間が大量にかかる。聞く側の精神が耐えられない。など)

取り組む場合、余裕のあるうちに、覚悟を決めて行う必要があります。

 

次に必要なのは、文章の組み立てを把握する力です。

(正確に言えば、「把握しようとする力」と言えるでしょうか。)

大雑把な言い方ですが、

文章の要旨を掴んだり、段落に小見出しをつけたり(段落の要旨を掴む)

物語文のあらすじを簡潔に説明出来たりする能力のことです。

 

まず、物語文です。

 

本をよく読んでいる子は、物語文が出てくれば

「誰が主人公なんだろう」「どういう性格なんだろう」

「このあとお話はどう進むんだろう」

 

というように考えながら読んでいくことが多いでしょう。

国語女子などが

「説明文は(時に)つまらないが、物語文は楽しい」と言ったりするように、

物語文には必ずこの作業ができるという楽しみがあるのです。

 

一方、国語苦手な子はどうでしょうか。

こういう子は上記の作業に魅力を感じませんから、

(だから本も読まない。又は読んだとしても

 自分の守備範囲のごく狭い内容のものしか読まない)

 

初見で読んだときに得られる情報量が圧倒的に少なくなります。

要点もつかめず、人物関係もわからず、

下手をすると主人公が誰なのかも間違える・・・

 

そう、母親からすれば

「物語文を読むときには誰だって考えて当然でしょう」

と思うような上記の思考を、全く持たない子供も存在するのです。

やっつけのような感じで読んでいたりするわけです。

 

一応文字は読んでいるが、

上記「把握しようとする力」が弱い、又は、無いということになります。

恐ろしい話ですが・・・

 

さらに、本をよく読んでいる子は、

よくある展開を予測できるようになってきます。

 

例えば最初の方に「気に食わない転校生」という描写があれば、

「こいつ、実は意外といい奴なんだろうな」という具合です。

 

(もっと攻める?ことができる子の場合、

相性が良さそうな文章だと

「どうやって仲良くなるのかな」「何がきっかけかな」

と考えたりします。

「趣味が同じだった」「ふとしたきっかけで家庭の事情を知った」

「芯のあるやつだということがわかった」

「どのパターンかな~」とわくわくしたり、予想が当たって嬉しかったり。

結構楽しいのですが、そんな人はあまりいないですかね・・・。)

 

同様に、背景事情も知っているケースが増えてきます。

イジメの話、家庭不和の話、

戦争中の話、異性が主人公の話、動物が主人公の話・・・

類似のものを読んだことがあれば圧倒的に理解しやすくなります。

 

(この背景事情は

頻出テーマを一覧にできるといいかなと思っているのですが、

自分自身、全てを網羅し把握しているわけでもないと思いますし、

なかなかまとめる暇がありません。)

 

こうしてますます読解力に差がついていきます。

 

一般的にどのテスト結果を見ても

国語は女子が上、他3科目は男子が上、という傾向になっていますが、

おそらく物語文だけで比べればさらに大きな差がつくと思います。

 

これは読書量だけが原因ではなく、女子の精神年齢が男子より高い、

女子はグループで生きている、という要素も強いです。

 

説明文については、こうした力の差の影響はだいぶ少なくなります。

難しい用語には注釈がありますし、行間を読む必要もありません。

ただ、どんな論説文も一読しただけでさくっとわかる、

という子はレアケースですから、

やはり、内容を把握しようとする力は必要です。

 

具体的には、「何がテーマになっているのか」

「現状はどうなっているのか」「問題点は何なのか」

「筆者の意見はどうなのか」という意識です。

 

いわゆる要旨というやつですね。

 

こうしたことを考えて読んでいる子は少ないですし、

気を付けるように言ったとしても、

興味のないテーマに対してこの姿勢はなかなか身につきません。

 

高校受験まで行けば、こうした頻出テーマについては解説本が出ています。

本来は幅広い視野が必要なところ、暗記に頼るという手法も考えられます。

(作文や小論文などは、頻出テーマごとに

書く内容をストックしておくとよいと言われています。)

 

しかし、今のところ中学受験用に

テーマをまとめたものはあまり見たことがありません。

また、小学生は発達度合いの差が大きいので、

列挙しだすときりがないかな、と思うところもあります。

 

よって、地道に練習していくしかないかなと考えています。

 

さて、文章全体の要旨とは別に、

もう少し細かい部分である段落相互の関係などを意識する道具として、

接続語は必ず集団塾でも取り上げられます。

 

ただ、取り上げられるだけで読解時の活用法は学びませんから、

ほとんど忘れ去られることになります。

 

先ほどの音読に続き、

線引きというのもこうした段落関係などを把握する手段です。

しかし、物語文で行う場合でもそうですが、

この線引きはあくまでも「手段」ですから、

理解力に応じて行う必要があります。

 

その点を何も考えず、

接続語でも逆説だったらこの記号、順接だったらこの記号、

例だったらこの記号を使え、

さらには、強調語にも線を引け、

「ので・から・ため」も文末には引け、それ以外は引くな、など

やたら細かい線引きを勧めるような本も見かけます。

 

例えば社会のテキストへの丸つけ、線引きをする場合を考えてみましょう。

 

まずは一番大事な用語

(テキストによっては最初から強調されています)を覚え、

次に大事な用語、次に、歴史であればその出来事が起こった背景へ、

というように段階を追って暗記範囲を広げていかなければいけません。

苦手な子ならなおさらのことです。

 

文章が何について書いているかという、テーマもわからないような子に、

初めから細かい線引きを求めても何の意味もないのです。

 

こうした点も含め、

「文章を理解する力」に即効性のある対策はありません。

あくまで、様々な要素を少しずつ向上させていくしかないので、

「国語は時間がかかる」と言われます。

 

「国語は勉強しても意味がない」というのもそうです。

 

読書量が多く、精神的に大人で、

既に周りに差をつけている子からすれば

「国語は勉強しなくてもできる」

 

ということになり、

 

読書量が少なく、幼く、世界観が狭く、

かなり遅れを取っている子からすれば

 

「国語は勉強しても成績が上がらない」

 

ということになります。

 

よって、

「文章を理解する力」の向上には、

その子に合わせた指導が必要なのですが、

小学生なので、促しても全く取り組んでくれない子などもいます。

1:1なのに、学級崩壊状態です。

さすがに滅多にいませんが、いることは事実です。

 

また、その子にとって、負荷が高すぎてもまずやりません。

苦手科目の克服どころか、放っておいたら即、ゲーム、漫画、マイクラ

例えばそういう子に、要約を課す。

文章を読むのすら好きじゃないのに・・・となってしまいます。

 

勧める人もわりといるのですが、

要約はできない子にとってかなり負荷が高いのです。

試しにやらせてみればたいていの場合、一向に終わらないはずです。

本文を読んで要約、という作業一つに、30分以上かかる子の方が多いでしょう。

 

レベルや性格に合わせ、その子に合ったやり方、

伝え方で取り組む必要があります。

なかなか難しいところです。